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千と千尋の神隠しとは何だったのか
2010年 10月 10日 *
宮崎駿作品で好きなものを挙げよと言われると、大抵初期の作品が挙げられる。
では宮崎駿作品は時代が進むにつれ退化しているのかというと、そうではない。
進化している部分もある。
しかし大部分の人はそれに気づかない。
かなり多くの人が視聴するアニメ映画ではあるものの、その進化を実感する人はほんの一部である。

例えば2001年に公開された千と千尋の神隠し。
普通の感覚で見たら、はっきり言って何が何だかわからない、到底理解不能なストーリだと思う。
だがある意味では、これまで築いてきたスタイルから比べて進化していると言える。(一般的には理解されないだろうが)
冒頭で訳の分からない世界に迷い込む。
不完全ではあるが、「おもひでぽろぽろ」の商店街のように過去の時代のリアルな描写から脱している点では進化と言ってよい。
映画「東京タワー」の炭鉱町のように過去を再現している場合があるが、だいたい、全ての視聴者が過去の炭鉱町を知っている訳ではない。
つまり、過去の再現の先にあるものが存在する。
それを視聴者に意識させた点で「東京タワー」は成功している。
千と千尋の神隠しの冒頭の幻想的な世界、多くの視聴者が理解できなかった部分では失敗しているが、方向性としては進化している。
あそこは攻殻機動隊 S.A.C. 2nd GIG第11話の草迷宮のように無人でなく人々がいてもよかったし、神とかではなく、単に主人公が貧しい生まれの出身で、一方的に虐げられる存在だった方がよかったのだ。

ああ、何を言っているかわからないよね。
きっとわからないだろう。
単に再現しただけでは、何の意味もないということ。
だったら美術の静物画なんて必要ないでしょう。
実際に野に咲くひまわりを自分の目で見た方が美しいに決まっている。
それなら静物画に存在価値はない。
違う、再現の先にあるものが存在するからこそ、静物画や美術が存在するのだ。

料理に例えてみよう。
おいしい料理とまずい料理、その差にあるものは何なのか。
「うまみ」とは何なのか。
僕も最初うまみと言われたって何のことだかわからなかった。
しかしこれはあくまでアプローチ方法の一つなのだ。
きっとおいしい料理には、それを構成する要素があるだろう。
お酒だって、どうして酔うのかといえば、それはアルコールが含まれているからだ。
現代人はそれを当たり前のように知っているが、知らなかったとしても古くから酒は存在していた。
同じ食材を使っても、調理方法や火にかける時間によっておいしくなったり、まずくなったりする。
それは科学の領域であり、同時に古くからの経験と知恵の領域でもある。
作品もそれと同じことが言える。
いい作品は人を感動させる要素がきっとあるのだろうけど、理屈で説明できる場合もあるし、できないものもある。
言葉で全てを説明しきれない。

どうしたら自分の考えていることを上手く伝えられるんだろう。
by nochoice1 | 2010-10-10 20:30 *
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