夜になって電車がなくなって、仕方なく彼女は僕の部屋に泊まって始発の電車で帰ることになった。
部屋の明かりを消した。
「ねえ、もう寝ちゃった?」と僕は聞いてみた。
彼女は、
「もう寝るから」
と言った。
僕も寝ることにした。
しばらく経ってから、もう一度彼女に聞いてみた。
「本当に寝ちゃった?」
彼女は何も答えなかった。
もう寝ちゃったのかと思いながら、僕は彼女の寝顔を見た。
部屋が暗くてよく見えなかった。
けれど、彼女の目がまだ開かれたままだったのが、薄い光でわかった。
「どうしたの?」
僕は言った。
彼女は何も答えなかった。
彼女はこちらをじっと見つめていた。
変な時間が流れた。
その後、自分が男であることを自覚した。
彼女もきっと、自分はなぜ変な声が出るんだろうと思ったに違いない。
僕は、あの時の目を一生忘れることはないと思う。