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カテゴリ:日常と非日常( 5 )
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2009年 12月 26日 *
僕はこの世界を毎日が退屈で憂鬱で明日への希望もない世界だと感じている。
一方、架空の楽しい世界のことを想像する。
それは日常の中で家族や友人とのつながりのある世界。
もちろん人と接することで傷つくことは沢山あるのだろうけど、世界が現状のような状況ではなく、街の人々みんなが楽しそうに歩いている世界。

ネットは世界を変えた。
それまでの産業が現実世界をより便利にする試みだとすれば、ネットが普及した世界ではネットを便利にするための試みに産業が変化している。
極端な例では部屋から一歩も出ずに生活することも可能となりつつある。
ネット上には現実世界と同じように店舗が存在する。
だがそこに店員が実際にいる訳ではない。
商品を購入した時には「ありがとうございました」と表示されるが、それは機械のプログラムによって表示されているに過ぎない。
それを言ったら現実のマニュアル通りの対応しかできない店員だっているじゃないかと言われそうだが、人とのつながりの有無ににおいて違いが生じる。

要するにインターネットが普及したところでロクなことは起こらない。
この世界がそうであるように。
そして僕はネットのない世界のことを想像してしまう。
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2007年 05月 27日 *
人が冗談で言っているのか本気で言っているのか分からない時がある。
「この前スーパーで買い物したらさ、レジの女の子がお釣りを渡す時に手を添えて来たんだよ。手と手が密着するくらいに。あの子、俺に気があるのかな」
これを友達が冗談で言っているのだとしたら、
「そうだよ。きっとその子はお前に気があるんだよ」
と言って話を膨らませる。
でも、もし本気で言っているのだとしたら、
「それはただの勘違いだと思うよ」
と答える。
変に期待させてしまうと、後で余計に後悔する事になるから。

ビニール袋がどうしても欲しい時があって、スーパーのレジに並んだ事がある。
前の人が会計を支払っている時に、僕はレジ店員の近くのカゴにビニール袋を入れた。
店員から一番取りやすい位置になるように気を遣った。
自分の番が回ってきて、一瞬店員の手が止まった。
「商品は?」と店員が言った。
「このビニール袋を下さい」と僕は答えた。
ふとレジの脇を見ると、割り箸やスプーンやビニール袋などが設置されている。
そういえば、僕の欲しかったこのビニール袋は、他の商品と一緒に無料で貰えるものであって、売り物の類ではなかったのかもしれない。

僕は交渉してみる事にした。
「一袋100円で売って頂けませんか?」
商品を買わずビニール袋を無料で貰うのは悪いと思ったのだ。
すると店員は、
「じゃ、割引しますね」と言って、レジを叩いた。
結局いくらになったのかわからなかったが、僕は200円を出した。
ビニール袋が買え、割引までして貰ってラッキーと思ったが、お釣りを受け取って驚いた。
お釣りが840円だった。

僕の後ろにはレジを待つ人の行列が出来ており、なるべく早くこの場を離れたかったが、レジ閉め段階で金額が合わないと店員がかわいそうだと思い、釣銭が間違っている事を指摘した。
店員は言った。
「お客様、1万円札を出されませんでしたっけ?」
僕は1万円なんて出していなかった。
それに、もし僕が1万円出していたとしても、お釣りは840円にはならない。
この店員はかなり適当だ、と思った。

「さっき200円渡しましたよね。それで釣りが840円なのはおかしいと思うのですが」
「少々お待ち下さい」
店員はレジのキーを何度も叩いて計算し始めた。
しかし、どうも頭が混乱してしまったらしく、解決の糸口は一向に見えなかった。

さっきから自分の後ろに並んでいた客の目が気になって仕方なかった。
一人のサラリーマン風の中年男と目が合った。そして彼は言った。
「まだなの?」
時間がかかると踏んだ他の客は隣のレジに移動し始めていたが、中年男はレジから離れなかった。
僕は中年男の方に向き直って言った。
「すみません、レジが故障しちゃったみたいなんですよ」
僕は最大限明るく振舞おうとして、更に付け加えた。
「機械ってすぐ壊れちゃいますからね~♪」
すると僕の言葉を聞いたレジの店員が、急にはっきりとした口調で言うのが聞こえた。
「いえ、レジの故障なんかじゃありません」
僕は、黙って840円を受け取らなかった自分を後悔した。
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2006年 10月 13日 *
最近なぜかお店の雑貨コーナーを見るようになってしまった。
子供の頃はプラモデルで遊んでいた事はあるけど、身の回りの物に対するこだわりなど無かったのに。

地元のあるお店で行列が出来ていた。
何の行列だと思って訊いてみると、映画の行列らしい。
そう言えば最近話題の映画が上映された事を思い出した。
しばらくすると中から人が沢山出てきた。
丁度前の上映が終わった時間らしい。

一瞬でわかった。

後ろ姿を求めては違うと気づくまでに時間がかかったけれど、本物の場合は一瞬でわかるものなんだ。
なぜこんな場所にいるの?
そんな疑問はどうでもよくて、大切なのは、君がここにいるという事実。

声はかけられなかった。
だからせめてメールを送ろうと思った。
作るのに1時間位かかってしまったけど、内容は「~で見かけたよ」という簡単な文だった。

結局送信ボタンは押せなかった。
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2005年 12月 12日 *
僕が幼い頃、父は週末に近所の公園や美術館、地方の観光名所など、色々な所に車で連れていってくれたらしい。
感受性の豊かな子に育って欲しいと、父はそう願っていたのかもしれない。
僕が大人になった今、幼かった頃の事を思い出す事が出来ない。
その頃の記憶は、思い出したくても思い出せない。

僕は車の後部座席に横になりながら、窓から流れる景色を見ていた。
意識がぼんやりしていた。
妙な感覚があった。
僕は夢をみているのだとわかった。
父が僕をどこかに連れていってくれているらしかった。

しばらくすると、僕は自分の部屋のベッドで横になっていた。
父のドライブからは帰宅していた。

部屋の様子を見ると、まるで違っていた。
ここが僕の部屋である事は間違いないのだが、僕の部屋ではなかった。
周りに置かれてある物が、僕の物ではなかった。
よく見ると部屋の内装も違うし、カーテンの柄も違う。
でも全く見覚えがないという気がしないのが不思議だった。

この部屋は僕が付き合っていた彼女の部屋に似ていた。
そういえば周りに置かれてある物は彼女の持ち物だった。
でもなぜ彼女が僕の部屋で生活をしているのかわからなかった。
まあどうせ夢なのだから、これ以上考えるのはやめた。

でも不思議な事がもう一つあった。
さっきから僕が思ったように体が動かせないのは、夢のせいだろうと考えていた。
しかしぼんやりとした感覚は、徐々にではあるが現実味を帯び始めていた。
この現実感は一体どこから来るのか。
ひょっとしてこれは夢ではなく、現実ではないだろうか。
そう考えてみた。
この考えの通り、これが現実だとしたら、僕は今何をやっているのだろう。なぜここにいるのだろう。
わからない。
自分の過去の事すら思い出せない。
やはりこれは夢なのだ。

でも妙な現実感の事が引っかかっていた。
こう考えてみた。
もし、僕が事故か何かに遭って、長い間意識を失っていたのだとしたら。
過去の出来事が思い出せない事は納得出来る。
すると、今見ているものは現実なのだろうか。
今までずっと夢だと思って見てきたものは、現実だったのだろうか。
長い間、父は、意識を失っていた僕に色々な景色を見せてくれていたのだろうか。
ちょうど今日みたいに。

徐々に現実の事を思い出してきた。

以前、彼女が僕にこう言った事がある。
あなたが車椅子になったとしても、ずっと好き。
その時は、なぜ彼女がそんな事を言うのかわからなかった。
僕が事故に遭うなんて全く想像出来なかったからだ。
けれど僕が今見ているものが現実だとすると、彼女が僕の部屋にいる理由がわかる。
彼女が僕に言っていた事は本当だったとしたら。

次に嫌な感覚を思い出した。
現実の辛さだった。
生きていくのが苦しかった。
これからもずっと苦しみ続けるのだろう。
頭の中にある考えが浮かんだ。
このまま起きなければ、辛い現実と立ち向かわなくて済むかもしれない。
現実は夢になるのだから。
僕はこのまま意識を失った人間になろうと考えた。

その時、部屋の扉が開く音がした。
彼女が部屋に入ってきた。
彼女は座布団に座り、リモコンのボタンを押してテレビをつけた。
しばらくして、彼女は何か言い始めた。
よく聞いてみると、テレビに出演しているタレントに向かって何か言ってるらしかった。

テレビ番組は出演者に対してこんな質問をしていた。
A.仕事面で実力があり、周囲からの人望も厚い人
B.仕事はイマイチだけど、自分と性格がピッタリの人
あなたが結婚するなら、どちらのタイプ?

彼女はテレビに向かって答えていた。
僕はショックを受けた。
彼女が出した答は、僕が想像していた答とは違っていたからだ。
彼女は僕の事が好きなのだと思っていた。
それは、僕の勝手な思い込みだったのかもしれない。

まだ間に合うだろうか。
僕は彼女の目を見ようとした。
「実力はないかもしれないけど、これからがんばるから。だから僕と結婚して下さい」
そう伝えようとした。
だが言葉が口から出て来なかった。
また体を起こそうと全身の力を入れてみたが、体は動かなかった。
それから何度も体を動かそうとやってみたが、やはり体は動かなかった。
それでも気持ちだけは伝えたかった。

思い切り息を吸い込んで吐いてみた。
何度も深呼吸した。
次こそ言おうという気で声を出そうとした。
「あ」
やっと声が出た。

彼女は振り返って、僕のいる方を見た。
彼女は驚いたような顔をしていた。
その後しばらくして、彼女は頷いた。
僕はなぜ彼女が頷いたのかわからなかったけど、嬉しかった。
僕はほとんど動かせない体で、彼女をきつく抱きしめた。
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2005年 03月 17日 *
コンビニのケーキはどうして2個入りなのだろう。
一度に2個も食べられないから、1個入りで十分だと思う。
でも、家で僕の帰りを待ってくれる人がいたら、その人のために2個入りのケーキを買って帰りたい。
この先誰かと一緒に暮らす事になったら、そうやって毎日喜ばせてあげたい。

僕は会社帰りにコンビニに立ち寄る。
会社から帰る時間には駅前の商店街は店を閉め切っていて、コンビニしか開いてないからだ。
店員はいつも決まっていて、買う商品も決まっている。
僕はジュース1本と2個入りのケーキを手に取り、レジに向かう。
店員は商品を袋に詰めた後、ストロー1本とフォーク2本を入れる。
僕はそのレジ袋を受け取って店を出る。
毎日同じ事の繰り返し。

たまに店員は商品を袋に詰める際、「ストローをおつけしますか?」と聞いてくる事がある。
意表を突いた質問に焦って僕はこう答える。
「はい、お願いします」

帰り道、なぜそんな事を聞くのかと考える。
別にどっちだっていいじゃないか。
僕は毎日ジュース1本と2個入りのケーキを買うだけなのだから。

今日もいつものように、ジュース1本と2個入りのケーキを買った。
何も変わった所はない。
それなのに店員はまた質問をしてきた。
「フォークは1本でよろしいですか?」
焦って僕は彼女にこう答える。
「はい」

帰り道、なぜそんな事を聞くのかと考える。
別にどっちだっていいじゃないか。
僕は毎日ジュース1本と2個入りのケーキを買うだけなのだから。
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The Original by Sun&Moon