こっちは混まない時間帯をわざわざ選んで食堂に来ている。
食堂はいつものように閑散としていた。
それなのになぜわざわざ自分の隣に座ってくるのだろう。
彼女は誰かと何か喋っていた。
そう、最初は携帯で誰かと話しているものだと思っていた。
だが彼女の方を見ると、携帯を持っていなかった。
つまり彼女は一人だけで会話をしていたのだ。
内容は昨日あった出来事のことなど。
周りからみたら、自分に語りかけているようにしか見えない。
そしてそれを自分が一方的に無視している。
彼女はまるで僕から返答があったかのようにずっと会話を続ける。
僕は一言も発していないのに。
僕は心の中で思った。
「彼女は間違っている」と。
だがその後しばらくすると、心の中でこう聞こえた。
「彼女は正しい」と。
僕は彼女が正しい世界の存在を信じた。
それから、目から涙がこぼれて仕方なかった。