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心地いい街
2011年 07月 17日 *
夜、自転車でとある街へ行った。
東京は自転車があればどこにでも行けていいね。

どうしてここに来たのか。
随分前の話になるけど、仕事で外出していた時、お昼にレストランに入った。
注文を受け付けるウェイトレスを見てあることに気づいた。
僕はこの人を知っている。
小学生の時に同級生だった子だ。
僕が憶えているのは、彼女がよくクラスで泣いていたことだった。
いじめに遭っていたのだと思う。
当時幼かった僕はいじめの概念すらなく、良くないことだとか止めようとか思わなかった。
ただ彼女の泣き顔だけは憶えていた。
そして何十年かして社会人になって、偶然再会した。
もしかしたら思い違いかもしれないと思い、ネームプレートをちらっと見た。
間違いない、やはり彼女だった。
しかし彼女は僕が僕であることなど気づきもせず、あくまで客として接する態度だった。
声をかけてみるか?
でも、そんなことをしてどうする。
彼女にとって小学校の頃の記憶など負の遺産であり、忘れたい過去に違いなかった。
あれから何十年も経ったが、彼女の顔はあまり変わっていないと思った。
当時の泣いている時の赤い目がよく残っていたから。
僕はその時、確かに落胆した。
何に?
彼女は生まれた場所から1駅しか離れていないこの場所で、10年以上経った今もバイトをしている。
僕は心のどこかで、期待していたのだ。
彼女が現在幸せに暮らしていることを。

現実なんてこんなものだ。
きっと当時彼女をいじめていた連中は、今頃どこかのおしゃれな街で幸せに暮らしているのだろう。
どうして、日陰で生まれ育ったというだけで、ずっと日陰で暮らさなければならないのか。
これが定められた運命なのだとしたら、僕はその運命を許さない。
もし僕が世界の創造主なら、その運命を許すことができない。

僕は彼女がどういうつもりでこのバイト先を選んだのか、それが知りたくてこの街に行ってみることにした。
ここは地元から1駅くらいしか離れていない。
でもなんとなく静かで心が落ち着く。
それでいて自分の存在を認めてもらえるような。
そんな心地いい街だった。
by nochoice1 | 2011-07-17 02:42 *
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