この考えからすると、この世の善や悪も数式化できるかもしれない。
単位時間に実行可能なあらゆる悪行の量を定量化し、それを減らすことができればこの世の中は今よりマシになるのかもしれない。
しかし悪魔の数式が判明したところで、所詮は数式の上での話に過ぎない。
数式に出てくるXの量を減らせばいいとわかったところで、実際に世の中をいい方向に導けるかはまた別の話だ。
神の数式がわかれば世の中はよくなるというのは理想論であって、結局は世界解釈の問題に替えられてしまう。
ただ物理のおもしろいところは、理論で導いた解釈を実験によって立証できる点にあると思う。
たとえば今の物理学の常識は、100年前の常識からはかけ離れている。
それは、実験値に最も近い理論が採用され、生き残っていくからである。
現時点では相対性理論は正しく、それによると、時間は相対的に遅れたり進んだりすることになっている。
だが、100年後の未来ではそれが非常識で、別の解釈が常識となっている可能性もある。