玄関の扉を開けたら雪が降っていた。
駐車場まで歩いていくと、車はすっかり雪で埋もれてしまっていた。
僕は部屋まで引き返して傘を持ってきて、それを使って積もった雪を払いのけた。
途中で傘がくの字に曲がってしまった。
それを元に戻そうとしたら、今度は完全に折れてしまった。
これはただの傘だ、と自分に言い聞かせた。
あの日も今日みたいに雪が降っていた。
1階でチェックアウトを済ませた後、二人とも傘を持ってなかったから、売店で買った。
気づけばあの日から、僕はその傘をずっと捨てられずに、今日まで使い続けていた。
雪はきっと溶けてしまうのだろう。
物事には必ず終わりがあるように。
景色を白く染めた日の事などまるで無かったかのように、日々を過ごしていくのだろう。
でも僕は忘れたくない。
雪が降った日の事とか、この傘の事とか。